アクタージュ 覚書 その10 (プロデューサー 天知 心一)

黒山作、夜凪主演の映画のプロデュースを手がけている事が明らかになった天知。

横道にそれますが、彼がどんな人物なのか、考えてみたいと思います。

(1)どんな人物か

1、「正直者」

このように、阿良也が評しています。一方で、王賀美には黒山が甲サイドではなく、乙サイドの演出家であることは告げず、花子には夜凪が「あの人の娘」である事は告げていません。

事実は語るが事実全てを語るとは限らないというタイプなのでしょうか。

 

2、「ヤバイ」

正直者だから、ヤバイとも阿良也はいっています。アリサ、手塚、黒山、王賀美と業界人の反応を見ても、おそらく有望な役者を何人もダメにしているんでしょう。心というとき、頭を指したと黒山に揶揄されましたが、効率的にすぎる金儲けを提示しすぎて、芸術家としての役者をダメにしていくのかもしれません。

 

3、「守銭奴

ただ、リスクを負わないわけではなく、むしろ、リスクを負ってでも大きな金儲けをしようとしています。例えば、羅刹女の公演に王賀美を呼ぶのには相応のリスクを払っているようです。

金を使って自分が贅沢したいというより、大きな金を儲ける事自体に関心があるゲームプレイヤーのようなタイプに感じます。

 

4、「芸術家が嫌い」

金とコネクションで築いたものを一瞬で乗り越える時があるので、芸術家は嫌いだといっていますが、金儲けの道具としてみているのとは違うニュアンスがありそうです。

むしろ、物を作り出す人間へのコンプレックスがあるようにも思えます。

 

5、まとめ

プロデュースを成功させ、金儲けをするという方向は違うが、リスクを負っても目的のためには何でもするという点では紛れもなくアクタージュ世界の住人という気がします。

 

(2)黒山映画との関わり

はっきりした描写がないですが、巌の葬儀の時の黒山との対面時にはプロデュースの話があるようには思えません。

しかし、甲サイドの初日が終わった時の黒山との口論の中で「映画人」というフレーズがでてきますので、この時点では羅刹女を将来の大作映画への布石に使おうという共通認識があったようです。

天知も夜凪を使っての将来的な思惑は当初から持っていたようですが、黒山映画との関わりは

天知の方から持ちかけたのか、黒山の方からなのか、興味深いところです。

自分は黒山が作ろうとしている映画について何かの情報を得た天知が自分を使わないかと持ちかけ、黒山も天知の手腕を買ってプロデュースを認めたという感じではないかと思います。

どこかで、二人の思惑の違いはぶつかるリスクはありそうですが・・・

 

(3)夜凪父との関わり

実は、夜凪父とのコネクションが今もありそうなキャラクターであります。

文秋砲(苦笑)を使って、夜凪を悲劇のヒロインとして売り出そうとした時に夜凪家の事情は調べたでしょうし、夜凪父とも接触はしたのでしょう。

羅刹女の脚本を芝居の経験がない花子に書かせるという着想は接触した夜凪父から花子の存在を知ったからなのでしょう。花子をモデルにした小説に目を通したからなのか、夜凪父から

花子がどういう人物なのか、直接聞いたのか。いずれにしろ、花子への口説き文句は花子という人間を知っていなければ言えない台詞だったかと思います。

 

(4)夜凪に対する想い

夜凪を好きな女といっていますし、金になる女優だと思っているのは間違いないところです。

ただ、羅刹女で花子に脚本を書かせ、演出させるというのは金の卵を潰しかねないやり方で、

(夜凪がつぶれれば、夜凪父や花子との醜聞で金は回収する保険はあったのかもしれませんが)夜凪の才能に対する微かな悪意のようなものも感じました。

それとも、黒山のように、こんな事でつぶれるタマではないと思っているのか・・・

いずれにしても、「芸術家が嫌い」というところに関連しているのかもしれません。

 

天知は興味深い人物で、アメドラの役者ものとかに出てきそうな気もしますね。 

 

次からは、12巻以降未収録分のうち、大河ドラマ編を振り返っていこうと思います。