アクタージュ 覚書 その14 (阿佐ヶ谷芸術高校 映像科へようこそ 2017WJ9 後半 バレ)

★ミニシアター前 黒山を待つ柊

出てくるなり、「飲みに行くぞ」

 

★居酒屋

あしらってみたものの、万人向けではない・無名という決め付けに腹を立てて

女子高生相手に管を巻く黒山。

 

そこへ「真夏の雪」のヒロイン(元カノ)登場。近所なので、黒山に呼ばれたという。

しかし、彼女は女優ではなく、看護士だった。

えっとなる柊に、

「そのとき、撮りたいものを撮るのが映画だ。」という黒山。世界とは何か。自分とは何かを探しているのは柊だけではないといい、その一端が見えたとき、伝えたいと思うのが映画だと続ける。

さらに、柊に「お前の全部をオレに観せろ。恥ずかしがらずに曝け出せ。」とひたすら絡み酒(苦笑

とここで、元カノの突っ込みが入って黒山は失神。

「ヒモのくせに酒飲む度にこうなるから別れたのよ。」と打ち上げはお開きに。

 

★自宅に帰った柊

課題のシナリオを書こうと原稿用紙に向かうが何も書けない。

「私はやっぱり空っぽなんだ・・・」

と、そこへ、母が「お友達」が来るけれども、独身ということになっているから、部屋から出ないでねといつものように言いに来る。

「うん。分かった。」といつものように返事をする柊。

 

『電気を消して、息を潜める。だって、私はどこにもいないから。』

 

 

★1-A 教室 

課題をチェックする黒山。

まずは、山田のとてつもない分量のSF活劇から。(市子が自分の映画が撮れなくなると心配するほどのヴォリューム!)

目を通しながら、そこに書かれている「悪」とは何かを山田に問う。

「人を殺すこと」との答えに、「では、復讐のために人を殺すのは?}「戦争は?}と次々

「悪」について問を発し、答えに詰まった山田に「答えをもってないなら、結論を描くな。」とダメ出し。

 

次は、結局、何も書けなかった柊。

謝る柊に、黒山は書くべきものが何なのか、分からないという自覚があるのは「悪くない」という。

「意味分からん。」とざわつく教室。

さらに、日曜日に面を貸せと柊に言い放つ。

 

阿佐ヶ谷駅 

待ち合わせをする柊。1時間遅れで現れた黒山のワゴンに突然乗せられ、撮影スタジオに。

 

★撮影スタジオ

なぜ、自分が連れてこられたのか、戸惑う柊に、「弟子が師匠を手伝うのは当然だ。」とうそぶく。

資金集めのためのウェブCMの現場と教えられ、そこまでして「撮りたいもの」がある黒山を別次元の存在と感じる。

 

と、ここでトラブル発生。

脱毛クリームのCMなのに、アイドル48人全員わき毛がないのは絵コンテと異なるとスポンサーともめ始める黒山(苦笑

「降りる」とまで言う黒山に勝手をするなというスポンサー。

そのとき、悪い笑顔を浮かべた黒山が「オレの弟子が演出しますよ」と申し出る。

まさかの展開に言い争う黒山と柊。

その最中、意外にも、スポンサーは可愛い女子高生が撮ったということなら話題にはなるし、監督などどうせ誰がやっても同じと言い出す。

 

それを聞いた柊は思わずスポンサーに鉄拳制裁 「アベシ」(笑

 

★スタジオ外 どこかの公園

 

落ち込む柊に、黒山はビール片手にあのスポンサーからの仕事がゼロになるだけと悠然としている。わざとこうするつもりだったのか・・・と思い当たった柊に、「そんなことより」と黒山はいう。

あそこで手が出るのがお前という人間だ。

「自分は何で怒り、悲しみ、笑うのか。」「もっと自分を追及しろ。」

「それが映画だ。」

 

★帰宅する柊。

黒山の言葉を反芻し続ける。

なぜ、スポンサーに怒ったのか。「自分の好きなものをバカにされたから。」

「独身ってことになっているから」という母の言葉を思い出した時は、「多分悲しかった。」

では、「自分はいったい何で笑うのか。」「心の底から笑ったのは何時なのか。」

「自分から逃げていたのではないか。」

 

そして、決意を固めて、母に言う。「撮らせて。」

 

 

★1-A教室

映像を観ている一同。

「ごめんね。雪」「雪の気持ち、気づかないで」

「少しでも、お金を持っている人と一緒になれば、あなたを大学まで行かせてあげられると思っていた。」

「私こそ、良い子ぶってて、ごめんなさい。」

それは、母娘の会話をスマートフォンで撮っただけのもの・・・柊の処女作だった。

誰にも観せるつもりはなかったが、対話を終えたとき、誰かに観てほしくて堪らなかったと柊。

 

ドキュメントとしてはシーンが少なく、バックグラウンドは分かりにくい、カメラもぶれぶれ。さらに、監督は自分から観せておいて、赤面している変態女子高生(笑 だと言いたい放題の黒山。

 

また、「ごめんなさいか。」と挑発する黒山に、「謝ることはしてないです。」と柊。

 

「監督の切実さしか伝わらない。それ以外は意味不明。」

「それでも観てもらいたいと思う。これを映画という。」

「自分の映画を誰かに観せた者が自ら映画監督を名乗る覚悟を持った時、映画監督は生まれる。」

「柊、お前は映画監督か。」と問う黒山。

あなたに映画を撮ってもらいたいと思うと涙ぐむ市子にも背を押され、柊は答える。

「私は映画監督です!!」

 

「なら、今日からお前ら商売敵だ。

オレにないお前らの才能を奪って、オレは育つ。お前らもオレの才能を奪ってみろ。

そのために、ココ(阿佐ヶ谷芸術高校)はあるっ」と黒山の挑発に口元に笑みを浮かべる柊。

 

ここで「阿佐ヶ谷芸術高校 映像科へようこそ」 終了です。

ちなみに、山田の才能は、一晩で超大作を描いてくる妄想力。

市子の才能は、自分主演の映画を撮ろうとする自己愛。

そして、柊の才能は、年不相応な、真っ白さと評しています。

 

*1

クリエイターの覚悟というテーマ。これはプロトタイプから一環していますね。

ただ、ここでは映画監督に焦点があたっているので、そこにアクタージュとの違いがあります。

映画監督は最終的に自分の作品として自分を曝け出す(少なくとも黒山流では)ので、そこの覚悟は相当なものがあります。

この話で柊が皆に曝け出した母との関係は、夜凪でいえば父との関係に匹敵するトラウマのようなものでしょう。これですら、作品として人に観てもらいたいと思う事、その覚悟こそが映画監督の資質という訳ですが、尋常な覚悟ではないですね。

さすがは黒山の弟子というところですが、師匠の方はどのようなものを抱えているんでしょうか。

柊については、アクタージュの羅刹女編ではカメラの設定でかなりのスキルを持っていることが分かりましたが、5年経過して20歳となり、監督としてのスキルもかなり上がってきているはずです。例えば、夜凪を使って、どういう映画を撮ろうとするのかも興味深いところです。

それ以前に、弟子として黒山の映画の内容も知っているわけで、助監督としてどう関わるのかというところではありますが。

 

柊の才能として、黒山が挙げた「真っ白さ」。どんな色にも染まるという夜凪の役者としての才能と共通しているところがあるようにも、ない様にも感じられるところです。

そのうち、柊についても考えがまとまれば、書いてみたいところです。

 

*2

一方、このプロトタイプにないテーマがアクタージュには登場しています。

それが、「この世界でしか生きられない者の幸福」、その裏返しとしての「芝居に溺れた者の不幸」。これがアクタージュに陰影や深みを与える要素になっています。役者夜凪景を主役にした由縁でもあり、これも考えてみるべきテーマですね。

 

*3 

今回、プロトタイプの「阿佐ヶ谷芸術高校 映像科へようこそ」を振り返ってみて、イロイロ思い浮かんだ事があります。

くだらない事でいえば、12巻で手塚が黒山の気に食わない点で挙げている看護士との合コン事件の当事者が元カノさんとの馴れ初めなのか(笑

 

他には、「ひまわり」を観た夜凪と「真夏の夢」を観た柊のリアクションの違いは、夜凪がプロの役者として観ているというのはあるのでしょうが、それだけなのか。

 

なかなか刺激的でまた折があれば突っ込んでみたいと思います。